コンコントのブログ

こんこんと湧き出る泉のように、たゆむことなくひととひととがモノを通してつながるように

栢野の大杉の大きな枝が折れた

木地師として、どういったこだわりをもって仕事をされているのですか?」
ありきたりな私からの問いに辻さんはこう答えました。




「木を切り出したということはその木は死んでしまったということ
死んでからもその木を活かさなきゃならんと思ってやっておる」





工藝の館があるのは菅谷(すがたに)という小さな町です。
その近くにある菅原神社の境内に栢野(かやの)の大杉というご神木があります。
栢野の大杉は樹齢2300年とも言われおり、国の天然記念物にも指定されています。




りっぱな幹です。




神々しいです。




写真に収まりきりません。

少し昔の話になりますが、その栢野の大杉の大きな枝が折れているという連絡が
天然記念物等の保護などを行う文化財保護委員会に入りました。
 
 
文化財保護委員会はさっそく栢野の大杉がある菅原神社に向かいました。
委員会が大杉を見たところ、そのままにしておくとそのうち大枝が落ちてきて、
観光にきたひとにあたってしまうおそれがあり、大変危険ということで造園業者に
処理を依頼しました。



処分してほしいと頼まれたものも、栢野の大杉はご神木ということで
造園業者が枝の処理に困ってしまいました。
そこで、辻さんが所属しているろくろ技術保存会に相談しました。
ろくろ技術保存会のメンバーが話し合った結果、大枝を預かり木地挽きで
作成できるものをそれぞれがつくることになりました。




辻さんが作成した栢野の大杉の大きな枝からつくった盃




木の一部として生きることを終えた大きな枝は辻さんの木地挽きによって、
新たに命を宿し姿を盃に変え、工藝の館に今もたたずんでいます。