コンコントのブログ

こんこんと湧き出る泉のように、たゆむことなくひととひととがモノを通してつながるように

ろくろ木地挽き体験のお客さんがご来館

休日の午後、工藝の館にろくろ挽き体験をされる二人連れの
お客さんがご来館されました。
最初に、見本のお椀の中から自分が作りたいと思う形のものを
選びます。

次に、若手の木地師より木地挽きのやり方を説明します。
鉋(かんな)をどのようにあてると木地を挽くことできるか
教えていきます。

そして、お客さんひとりにつき職人がつきっきりで、
お椀の外側の形状を挽いていきます。

鉋(かんな)をあてる角度を職人がその都度説明して、
思い描く形になるように丁寧に教えていきます。
刃物を扱っているので、お客さんも真剣な眼差しです。

だんだんと理想の形に近づいてきました。

外側の形が決まりましたら、あとは職人が外側の細かい部分や
内側の形状を整えていきます。

約30分くらいで完成しました!
お客さんはとても貴重な体験ができたと喜んでいらっしゃいました!



工房内にはこのようなお客さんからの木地挽き体験に対する
感謝のお手紙が展示されています。

栢野の大杉の大きな枝が折れた

木地師として、どういったこだわりをもって仕事をされているのですか?」
ありきたりな私からの問いに辻さんはこう答えました。




「木を切り出したということはその木は死んでしまったということ
死んでからもその木を活かさなきゃならんと思ってやっておる」





工藝の館があるのは菅谷(すがたに)という小さな町です。
その近くにある菅原神社の境内に栢野(かやの)の大杉というご神木があります。
栢野の大杉は樹齢2300年とも言われおり、国の天然記念物にも指定されています。




りっぱな幹です。




神々しいです。




写真に収まりきりません。

少し昔の話になりますが、その栢野の大杉の大きな枝が折れているという連絡が
天然記念物等の保護などを行う文化財保護委員会に入りました。
 
 
文化財保護委員会はさっそく栢野の大杉がある菅原神社に向かいました。
委員会が大杉を見たところ、そのままにしておくとそのうち大枝が落ちてきて、
観光にきたひとにあたってしまうおそれがあり、大変危険ということで造園業者に
処理を依頼しました。



処分してほしいと頼まれたものも、栢野の大杉はご神木ということで
造園業者が枝の処理に困ってしまいました。
そこで、辻さんが所属しているろくろ技術保存会に相談しました。
ろくろ技術保存会のメンバーが話し合った結果、大枝を預かり木地挽きで
作成できるものをそれぞれがつくることになりました。




辻さんが作成した栢野の大杉の大きな枝からつくった盃




木の一部として生きることを終えた大きな枝は辻さんの木地挽きによって、
新たに命を宿し姿を盃に変え、工藝の館に今もたたずんでいます。

昭和の歌謡曲

辻さんは昭和歌謡曲が好きです。
木地挽きしているときも聴いています。



そのなかでも春日八郎と三橋美智也がお気に入りのようです。



今日も車を運転しながら、歌謡曲を口ずさんでいます。

工藝の館について

石川県加賀市には名湯山中温泉があります。
その温泉街を抜けた静かな山里、菅谷(すがたに)町に工藝の館はあります。

もともと木地師の多い地域であった菅谷町では、町おこしの一環として
地域住民が地場産業である山中漆器を紹介するための施設として
2009年の7月に工藝の館をオープンしました。



こちらは辻新太郎さんが生まれ育った家屋を改装した建物で、
なんと築140年ほどにもなります。

工藝の館にはろくろが2台あり、一般のひとが自由に木地師
ろくろ挽き作業風景を見学できるようになっています。



見学するだけでも面白いですが、工藝の館の一番の特色は、
なんといってもろくろ木地挽き体験をできるところです。
体験では、若手木地師がつきっきりになって、おわんの外側を
削る工程を手を取って指導してくれます。
内側や細かい部分はプロの木地師が行いますので、安心です。
木地挽きが完成したおわんは漆を塗った後、後日自宅まで送ってくれます。
汁椀、サラダボール、丼などさまざまな大きさのものを作成可能で、
3,000〜5,000円でできます。



この写真は私が木地挽き体験をしたときのものです。
実際にはしっかりと職人さんが補助してくれますし、
体験で木地挽きするのは外側のみになります。



左が木地挽き前のもの、右が木地挽きできたおわんです。

山中温泉に旅行に来たときはぜひ、ろくろ木地挽き体験をしてみてください!

工藝の館でのろくろ木地挽き体験の詳細はこちらから
http://tabimati.net/midokoro/detail_kanko.php?p=1882

見晴らしのいい場所を求めて

CAMPFIREプロジェクトページの冒頭に載せてある動画を撮影したときの辻さんとのやりとりをご紹介したいと思います〜

プロジェクトの動画をつくるにあたって、辻さんが汁碗の木地を挽いているところを撮影させていただきました。
木地挽きの撮影が無事終わり、辻さんに尋ねました。

「このあたりで菅谷(すがたに)の町を高い場所から眺められる場所ってないですか。」

すると辻さんが、



「そうやね・・・山に行けば見晴らしのいいところはあるけど・・・それじゃ、今から行ってみるか。」

急な展開に驚きながらも・・・

「お願いします!」



辻さんの軽ワゴン車で工藝の館近くの裏山に向かいました。
このあたりは辻さんが小さいころよく遊びに来た場所だそうです。



軽ワゴン車で舗装されていない山道をどんどん駆け上がっていきます。



次第に道についていたタイヤの跡もなくなり、ガタゴトと車が揺れるようになりました。

こんな道を通って大丈夫なのかと不安になり、

「こんなところまでいつも来るんですか?」



「うん、来るよ」

と辻さん。

辻さんってずいぶんワイルドな方だなと思っていると、道が行き止まりになりました。

ここから少し草木をかきわけて歩いて行くと、見晴らしのよい場所にたどり着きました。



「杉の木が生長してしまって菅谷の町が見えなくなってるわ。よく見えるのは山中(隣の町)やね」

と辻さん。

残念だなと思ってとりあえず写真を撮っていると、辻さんが、

「それじゃあ、違う山に行くか」

そんなに時間を取らせていいんですかと思いつつも、

「お願いします!」

 

草木を避けながら車がある場所に戻り、来た道を降りて行きました。

そして、しばらく別の山道を車で登っていくと景色が開けてきました。



「おーここなら菅谷(すがたに)がよく見えるわ!」

ようやく菅谷の町がよく眺められる場所にたどり着くことができました。

写真を何枚か撮って車に戻ると、辻さんが、

「山の上の方まで行ってみるか」

ドライブに来たみたいになってきたと思いつつも、せっかくなので

「行きましょう!」

さらに山道を登っていくと展望台がある場所にたどり着きました。



車を降りて、展望台に上がって行きました。



「見晴らしいいやろ」

と辻さん。



石川県と福井県の県境の山の上にある展望台なので、石川県と福井県を同時に一望することができました。



「あそこはなになにで・・・」と詳しく説明してくる辻さん。

辻さんのお気に入りの場所みたいです。